5.ヨーロッパでのレッスン

 今年6月、2年ぶりにヨーロッパに行ってコーネン氏のレッスンを受けてきました。日本で活動を始めて15年になりますが、自分ひとりで勉強していると、ときどきいきづまることがあります。そんな時はヨーロッパに行ってレッスンを受けて、空気を吸ってくるとリフレッシュできます。

 今回のメインはバッハの「ゴルトベルク変奏曲」でした。私はまだ、この曲を演奏会で弾いたことがありません。どうにも太刀打ちできない「何か」があって敬遠していたのです。でも、いつかはやらなければいけない、と思っていましたから、時間のある時に引っぱりだして少しずつ練習していました。

 「アリア」は演奏会のアンコールで何度も弾いたことがあります。でも、レッスンではこの「アリア」からずいぶん直されました。全体的に言われたことは「テンポが速すぎる」ということです。たくさんの人がこの曲を録音していますが、私もそれを聴いて「速い」と思っていたので、自分なりのテンポを設定したつもりだったのですが、それでも「速すぎる」と言われました。

 特に第23変奏曲は「これはただの音階じゃないんだ。なんてきれいな音階なんだ!と思って弾かなくてはいけない」と言われました。テンポに関しても「僕も1年さらえばKyokoと同じテンポで弾けるようになるだろうけど、絶対にそんな速いテンポじゃ弾かない」と言われてしまい、けっこうグサッときました。

 留学中、レッスンを受けていてこんなことがありました。「なんでKyokoは黙って僕の言うことをウン、ウンと聞いているんだ。僕先生、貴女生徒、という時代は終わったんだよ。先生と生徒はディスカッションしなければいけない。」日本では考えられないことです。

 まず学校教育の違いから、日本人は議論して自分の意見を言う、ということに慣れていないから、そうなってしまうのかもしれません。そして目上の人に自分の意見を述べる、ということは日本人にとってはとても勇気のいることです。

 6月のレッスン以来、忙しくてゴルトベルクを弾いていないのですが、来年夏、初めて演奏会にかけることにしました。どんな風に仕上がるか、私にもまだわかりませんが、ヨーロッパの空気、空間を忘れずに曲を作っていきたいと思っています。


2000.9.16