14. デビュー20周年リサイタルによせて

 ベルギーでの2年半の留学生活を終えて帰国し、デビューリサイタルを開いてから、早や20年の歳月が流れました。その間、リサイタル、アンサンブル、モダンオーケストラの客演等、さまざまな活動をしてきました。


 今回のリサイタルは、デビュー以来主なレパートリーとしてきたF.クープランとJ.S.バッハの曲を中心に、近年積極的に取り組んでいるバッハの先達たちの作品でプログラムを構成しました。昨年10月に録音したものと共通の曲もありますが、すべて同じではつまらないと思い、多少違う曲も入っています。

 スウェーリンクの「涙のパヴァーヌ」は何回か演奏会で取り上げている曲です。なじみのあるメロディーですし、演奏会の始まりとしては適切だと思います。次に、フローベルガーの「カンツォン第2番ト調」を持ってきました。この曲は演奏会で取り上げるのは初めてですが、半音階を含む主題が魅力的で、弾けば弾くほど好きになってきました。次に演奏するベームの「プレリュード、フーガとポストルディウム」とは調性が同じなので、2曲続けて演奏します。この作品は、私がチェンバロを始めて間もないころ、ラジオで流れたのを聞いて「カッコいい曲だなー!」と思いました。たくさんの和音を鳴らすのはチェンバロにとっては難しいことなので(ただ音を弾くだけではいけない。「鳴らす」のが難しいのです)、かなり長い時間をかけてさらい、数年前に初めて演奏会で弾きました。

 F.クープランの「オルドル第18番」は、27曲あるオルドルの中でも私が最も良く弾いている曲です。ヘ短調の情緒あふれるアルマンドに始まり有名な「修道女モニク」、ヘ長調のパワフルな「喧騒」、そして同じ音域を上下の鍵盤で演奏する「Piece croisee」も入っていて、全部通して弾くと様々なタイプの曲が楽しめます。

 J.S.バッハの「パルティータ第6番」は、デビューリサイタルでも取り上げました。その時のテープが残っていたので聴いてみました。若い時のエネルギッシュな演奏で、それはそれで悪くないなと思いましたが、20年経つと解釈がずいぶん違ってくるものもあります。この曲の持つ奥深さが出せればと思っています。

 楽器は久しぶりに私の所有するもの(1981年、堀榮蔵作 グジョン-フレンチモデル)を使います。

 尚、お仕事帰りに演奏会に来てくださる方々の事を考え、開演を7時15分にしました。殺伐とした事件が多発している中で、ひとときでも音楽とともに時間を過ごしていただければ幸いです。